医学博士は「本当に」必要?臨床、研究、そして人としての成長
「博士号って、本当に必要なのか?」
多くの医師は、一度はこの疑問が頭をよぎったことがあると思います。
博士号取得には、時間もお金もかかるため、人生における大きな決断です。
医学博士号は、医師としてのキャリアにおいて、どのような意味を持つのでしょうか?
今回は博士号取得の必要性について解説します。
結論から言えば、医学博士の必要性は、目指す医師像、研究への興味、
そして医療への貢献の形によって大きく異なります。
個人的には、取得した方が良いと思っています。
臨床医としてのキャリアと医学博士
日々の診療に忙殺される臨床医にとって、研究に時間を割くことは容易ではありません。
「患者さんを一人でも多く救いたい」という強い思いを持つ方にとって、
研究よりも臨床経験を積むことが優先されるのは自然なことです。
しかし、臨床経験を積む中で生まれた疑問や課題を深く掘り下げ、
Clinical QuestionをResearch Questionへと昇華させることは重要です。
そのためには大学院へ進学し、医学博士を取得することは有力な選択肢となります。
また、大学病院や基幹病院の指導的立場を目指す場合、医学博士号が昇進の要件となることもあります。
高度な専門知識と研究実績は、後進の育成やチームを率いる上で重要な資質とみなされるからです。
どこの大学病院でも、助教以上に昇進するには、学位が必要だと思います。
研究者としての道と医学博士
もしあなたが、病気の根源的なメカニズムの解明や、画期的な治療法の開発に情熱を燃やすなら、
医学博士号は研究者としてのキャリアを歩むための必須のパスポートとなります。
医学研究は、人々の健康と未来を左右する重要な分野です。
基礎医学、臨床医学、社会医学など、多岐にわたる領域で、医学博士は新たな知見を生み出し、
医療の進歩に貢献しています。
研究室での実験、臨床データの分析、論文執筆といった研究活動を通して、
あなたは世界にインパクトを与える発見をする可能性を秘めているのです。
医学博士取得のプロセスと得られるもの
医学博士の取得は、決して簡単な道のりではありません。
研究テーマの設定、実験やデータ収集、論文作成、そして最終的な学位審査といったプロセスは、
時間と根気、そして何よりも研究への情熱を必要とします。
しかし、その過程で得られるものは単なる学位だけではありません。
論理的思考力、問題解決能力、批判的吟味能力、そしてプレゼンテーション能力といった、
医師として、そして社会人として不可欠なスキルを磨くことができます。
個人的には、学位にあまり意味はなく、上記のスキルを身につけることが重要だと思っています。
また、博士論文を完成させた時の達成感は、大きな自信となり、その後のキャリアを力強く支えてくれると思います。
実例
僕の大学院入学から学位取得、卒業までの経過を示します。
- 2021/04 大学院博士課程入学
社会人大学院生として地元で臨床を継続しつつ、コロナ禍であったため、on lineで講義の単位を取得 - 2022/01 入学した大学院の附属病院に転職、実験開始
- 2022/11 実験終了、統計解析開始
- 2023/06 関連学会で研究内容を報告
- 2023/09 論文執筆開始
- 2024/03 submission
- 2024/04 revision
関連病院へ出向、一人血液内科を始める - 2024/05 revise and resubmission
- 2024/06 accepted
- 2024/10 学位審査申請
- 2025/01 学位審査
- 2025/03 学位授与、卒業
上記の経過で、なんとか4年で学位を取得できました。
最後に
「足の裏の米粒」と揶揄される通り、医学博士は、必ずしも全ての医師にとって必須の資格ではありません。
しかし、あなたがより深く医療を探求し、研究を通して新たな価値を生み出したいと願うなら、
医学博士号はあなたの可能性を大きく広げるでしょう。
もし今、医学博士の取得を迷っているなら、まずはあなたの心に問いかけてみてください。
「自分はどのような医師になりたいのか」「医療の発展にどのように貢献したいのか」。
その答えを見つめた時、医学博士という道が、あなたにとって本当に進むべき道なのかどうか、
自ずと見えてくるはずです。